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乳がん治療と乳房再建、そしてこの病気からどんなギフトを得るのか?自分の体験を通して、病気とは人にとって何なのかを観察記録していきます。


by holyqueen
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湯灌の思ひ出。


「おくりびと」の原作である
「納棺夫日記」を読み返している。

この作者の文体は、
簡潔で淡々としている。

読んでいるうちに
自分から距離をとれ、
世間の物差しから距離がとれ、
静かな気持ちになることが多い。

ひとは誰しも死と生を生きている、
というシンプルな事実に立ち返る気持にもなれ、
時々引っ張り出しては読む。

読む毎に感じ入ることがある。


今日は読みながら
父の湯灌の時を思い出した。

私が仕事に行っている間に父が死亡したことは
以前ここに書いたけれど、

葬儀の手配先は既に決まっていたので、
死後、遺体はすぐに互助会の事務所に移動された。

葬儀まで1週間ほどあった。
事務所とはいえ
祭壇もあり、葬儀まで遺体を冷蔵保存してくれる。

葬儀の何日前だったろうか。
そこで湯灌を行ってくれた。

祭壇のある部屋で待っていると
係の男性と女性が
これから湯灌の儀を始めます、
ということをアナウンスし、
ステンレスでできた低いストレッチャーに乗せた遺体を
まるで舞台袖から出てくるように運んでくる。

横になり、
白装束を着せられている父の遺体の
胸辺りから足の先まで、白い布をおろして隠し、
装束を脱がせる。
そして設置してあるシャワーを使い、
身体を洗ってくれる。
そこまで、我々はそれを見ているだけである。

頭にシャンプー(!)をつける。
係の女性が少し洗ってから
よろしければご家族の方もぜひ、
という意味のことを言う。

シャンプーの泡の中に指を入れ、
ごしごし動かす。
アタリマエのことだが、
地肌が冷たい。
でもね、シャワーはぬるま湯だったのです。

再び係の女性が
身体全身に最後のシャワーをかけて清めてくれ、
タオルで丹念に身体の水分を拭ってくれ、
また白装束を着せる。

隠しの白い布がとられる。

メイクアップアーティストが使うような
本格的なメイクボックスを持ってきて
丹念に顔のメイクをしてくれる。

これで、湯灌の儀は終了だった。
見事なまで無駄のない動きだった。


死斑の出ているであろう身体を
見せないための演出は、
その時の自分にとっては
生々しい死の隠蔽なんだな、と感じられたことだったが、
それを見たくないという方も多いのだろう。

それにしても鮮やかな手さばきが
印象に残っている。



きっと彼らは
「おくりびと」を見たのだろうな。



☆☆☆☆☆☆☆

いつも読んでいただいてありがとうございます。
がんのこと、がん治療のこと、
そしてあらゆる病気から得られるギフトについて
もっと多くの方に知ってほしい!ので
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by holyqueen | 2009-03-24 21:38 | 死と生について考える