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乳がん治療と乳房再建、そしてこの病気からどんなギフトを得るのか?自分の体験を通して、病気とは人にとって何なのかを観察記録していきます。


by holyqueen
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最期の晩餐を病室で

さきほど、某SNSでも披露したネタなのですが。

肺がんから肝臓転移の父の入院時のこと。

父の知人から上等な牛肉をいただき、
食べさせてやって、と言われた。
バタバタしていてしばらく冷凍庫保存だったが、
兄妹でそういえば…という話になった。

…最初の入院では抗がん剤がかなり効き、
ほぼがん細胞を叩けた。
一時は退院したものの
一ヶ月後の再検査、即入院。
明らかに増殖していた。

その後の病状はかなり厳しく、
進行も早かった。
おそらくもう退院はできないだろうと思われた。

そんなある日に
牛肉のことを思い出したのである。

で、半ばネタで
病室ですき焼きしちゃおうか?と兄妹で話していたら
実施することになったのだった。

個室ではありましたが
それはそれはドキドキモノでした。

ただでさえ主治医に「若造が!」とか
怒鳴りつけちゃったりしていたらしいし(父も医者なので)
治療方針を巡っても意見が合わなかったし、
若造(笑)の主治医からは
「病前性格が濃厚に出ていますね。
治療方針が合わなければ転院してもらうか、
ご家族で見てあげた方がいいかもしれないですね」
というマイルドにして強力な脅しのコトバもいただいていたので。

うまいまずいにはうるさい父だったので、
病院のまずいメシには手つかず状態ということもあり、
計画は秘密裡に決行された…

ナースの回診時間を過ぎたところで
大きな袋にコンロをしのばせ病室に集合。
景気づけに寿司も買い。

皆で準備をしている間に
父は寿司の魚の部分だけたいらげていた…
残ったシャリだけを食べながら
本気で腹が立ちました(笑)

匂いを気にしながらも
我が一族は皆食べることが大好きなので
かなり盛り上がりつつ
すき焼きに夢中になっていた。
父に食べさせるという目的も忘れるほど(笑)

宴たけなわのときに
ドアが開いた。
もちろん主治医の登場ですた。

彼は一瞬絶句しながらも
「いやあ〜おいしそうですね〜」と平静を装う。
父は「先生もご一緒にいかがですか?」と
上機嫌で切り返す。
我々はなぜか咄嗟に自分の皿を背中の後ろに隠したのだった(笑)

…これが最期の晩餐になった。
昼だったけど。
一週間後、父は他界した。


最後においしいものを食べさせられてよかったと思うし、
つらい病院通いの日々で楽しい思い出となった。

ヤツは頑固な寂しん坊だったので、
久しぶりに家族に囲まれ
ワイワイ言いながら食事ができたことは
とても嬉しかったのだろうと思う。

…でも、あの時の父の満面の笑みを思い出すとちょっと切なくなるのである。


☆☆☆☆☆☆☆

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by holyqueen | 2008-07-18 00:23 | 死と生について考える